贈与にまつわる不思議~「贈与した=損した」側になぜ税金がかかる?①

【相続・贈与】の落とし穴

以前の記事で書いた、贈与にまつわる悲劇のケース。

こうした悲劇に見舞われないためにも。

そもそも「贈与」にはどのように課税が行われるのか。

今後数回の記事で一度整理してみたいと思います。

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なぜ「贈与した側」に税金がかかる?

「 贈与を受けた人=儲かった人」に税金がかかる。

これは感覚としてだれでも納得のいくところだと思います。

汗水垂らして一生懸命働いた中から、みんな何割か所得税を払うわけです。

棚からぼたもち的な贈与・相続の収入からは。

少なくともそれ以上は税金を課すべきだ、と多くの人が思うところでしょう。

 

ところが、「贈与した人=損した人」に税金がかかる?

というと、「なぜ?」と思うのが普通の感覚ではないでしょうか。

 

税法ではこんな風に、

「普通の感覚で考えるとおかしいけど、課税逃れを防止するためには必要な規定」

がたくさんあります。

 

個人から法人に贈与する場合

例えば、次のケースを考えてみてください。

資産家のお父さんがいます。

先祖代々の現在時価10億円の土地を持っています。

良い値段まで値上がりしていますので売却を考えています。

そして、なんとか相続税課税を逃れつつ息子にやってしまいたいと考えています。

このお父さん、いくつも会社を経営しているのですが。

そのうちの一つが10億円の大赤字を出して債務超過になっています。

 

さて、このお父さん、10億円の赤字会社をまず息子に譲ってしまいます。

債務超過、利益も出ていない会社ですので、この会社の時価は0です。

タダで渡せます。

続いて、10億円の土地を、この会社に贈与します。

会社は10億円の受贈益が出ますが、繰越欠損がありますので法人税はかかりません。

続いて会社はそのまま土地を売却して10億円の現金に換えてしまいました。

 

もし、贈与した側に税金がかからないとするならば。

このお父さん、無税で息子さんに間接的に10億円を渡してしまえることになります。

 

あくまでも一例ですが。

このように法人を間にかませるといろいろと課税逃れが可能になってしまいます。

ですので個人から法人に贈与した(法人をかませた)場合には。

「あくまでも時価で売却して、代金を贈与した」と考える、

「みなし譲渡」と呼ばれる規定があります。

 

先程のケースですと。

お父さんが会社に贈与するタイミングで。

「お父さんが先祖代々の取得費不明の土地を10億円で会社に売った」

「そしてその後代金の10億円を会社に贈与した」とみなして。

ほぼ10億円の譲渡益に対して譲渡所得税がかかるわけですね。

ここで税制上つかまえるわけです。

 

本来はこのように、

「課税逃れを考える良からぬ人を捕まえる」

ための規定なのですが。

税法の大前提に、「課税の公平さ」という要素がありますので。

「悪気はなかった」「知らなかった」であれば見逃しますよ、というわけにもいきません。

結果的に、何も知らない悪気のない人まで。

同じ網にかかってつかまってしまう悲劇が起きるわけです。

 

今回は「個人から法人に」贈与したケースを考えました。

次回の記事では「法人から個人に」「法人から法人に」贈与したケースについて考えます。

 

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