おはようございます。福岡・北九州の税理士、岩永です。
いよいよ本格的に寒くなってきましたね。
年末、なにかと飲み会や贈り物など、“交際費”の増える季節です。
ときどき、「交際費はいくらまで使って良いですか?」と聞かれることがあります。
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質問のニュアンスがわからないとお答えしにくいので。
「使ってはいけない」というのはどういう意味ですか?
と逆にお伺いしてみます。
「よくわからないけど、売上高の何%以上使ってると税務署から怒られるとかないの?」
などと答えてくださいます。なるほど。
「税務署から怒られる」という言葉には2つのニュアンスがあると思います。
1つは、「実際に税務調査で否認されて追徴を受ける」、
もう1つは、「目を付けられて調査に入られる」ではないでしょうか。
税務上「否認される」交際費の限度額
実は、売上高の何%以上なら否認、というような基準はありません。
個人と法人でざっくりと限度額が決まっています。
①個人事業主 … 限度額無し!(いくらでも経費可)
②法人(資本金1億以下) … 年600万円(90%損金)
③法人(資本金1億超) … 全額損金にならない
なぜ規模の小さい企業ほど枠が大きいのかな、と思うのですが。
下請けと元請けが飲みに行けば、下請けが払うでしょうから、ということでしょうか。
なお、平成25年4月1日開始の事業年度から。
②の法人は限度額が年800万円まで引き上げられたうえ。
従来90%損金であったのが全額損金になります。
景気対策の為、国としても交際費を使う方向に動かしたいようです。
限度額の問題ではなく、否認される交際費
さて、では個人なら青天井、資本金1億以下法人なら年800万まで。
交際費で否認されることは無いということでしょうか。
決してそんなことはありません。
ちまたで使われている「交際費」という単語。
税務上の「交際費」と微妙にニュアンスが違います。
税法上の交際費の定義は下記のとおりです。
「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する
接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用」
ちまたの「交際費」とは、なんとなく単なる「飲み代」「遊び代」ではないでしょうか。
税務上の「交際費」とは、「事業に関係のあるものに対する接待等」。
つまり、売上の契約を取るために。
見込み客を紹介してもらうために。
仕入の条件を有利にするために。
同じ費用でより良いシステムを組んでもらうために。
その相手に対して支出する費用。
「利益に貢献する支出である交際費」が交際費なのです。
単なる社長や親族の遊び代は、税務上「交際費」ではありません。
これらは社長や親族に対する「給与・賞与」です。
今年の総勘定元帳の「交際費」のページをご覧になってください。
接待の相手先は明記されていますか。(相手先がわからないのは問題外です。)
その相手先を接待する理由を調査官に説明できますか。
これが全くできない場合、社長への「賞与」と認定され、否認される可能性があります。
その10万円の交際費で、純利益率20%、100万円の仕事の受注ができるなら。
あるいは相場が100万円の商品を80万で仕入れられるなら。
500万でも600万でも、迷うことなくどんどんお使いになってください。
胸を張って経費になさってください。
調査官から、「何でこんなに多いんですか!」と聞かれたら。
全く悪びれずに、その交際費のおかげでどれだけの利益が出ているか語ってください。
でもたとえ1万円の交際費でも。
1円も利益に貢献しないなら、それは単なる遊び代かもしれません。
税務上「怪しまれる」交際費の限度額
冒頭のもう一つのニュアンス。
「目を付けられて調査に入られる」可能性についてはどうでしょうか。
調査官が調査先を選定している基準が公開されているわけではありませんので。
推測の域を出ませんが、調査官も人の子です。
固定資産台帳に高級車がずらりと並んでおり、交際費が湯水のように計上されていれば。
やはり調べてみたくならないとは限りません。
「一般的な相場」について、国税庁が統計を公開しています。
農林から始まって業種別に統計が並んでいます。
最後のページに合計があります。
「交際費支出額」を「法人数」で割ってみますと。
資本金500万円~1000万円の黒字法人で、年間160万円前後。
同じ規模の赤字法人で、年間70万前後でしょうか。
「調査に入られても何もまずいところはない、いつでも来い!」
という社長様なら。
別に気にすることもないとは思いますが。
もし気になるようでしたら、このあたりの統計も参考になさるのはいかがでしょうか。
いずれにしても。
見た目、羽振りが良いだけの社長様ではなく、本当に利益を出しておられる社長様。
ほとんどの方は、「利益に貢献しない費用」に対してシビアであるようにお見受けします。
仕入や外注費について、
・本当にそれが収益に貢献しているか
・もっと効果的な仕入先はないか、もっと安くならないか
検討するのと同じように、交際費についても検討なさっています。
そのようにしていれば自然と交際費は減り、利益は増え。
もし税務調査で指摘された際も、堂々と胸を張っていられると思います。
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