損金算入可能な役員賞与「事前確定届出給与」のデメリット~社会保険料の負担!

きちんと経理で【節税】

前回の記事では「事前確定届出給与が実は利益調整に使える?」

というメリットについて検証しました。

後編の記事では事前確定給与最大のデメリット、社会保険料の負担について考えます。

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中小企業最大の負担は租税より社会保険料!

私のクライアントの予算組みや税負担シミュレーションをする際。

年々、インパクトが大きくなっていると感じるのは社会保険料です。

 

一昔前は家族だけの法人であれば、未加入でも何も言われなかったそうですし。

料率も今ほど高くなかったので。

個人事業の法人化シミュレーションをする際など。

社会保険料については検討外としている税理士事務所も多かったようです。

 

しかし時代はずいぶん変わりました。

一時期ずさんな事務と不祥事の発覚続きでさんざん叩かれた社会保険事務所は。

未加入事業所の摘発を行うようになりました。

 

そして年々上がり続ける社会保険料・厚生年金保険料率は。

平成28年9月現在福岡県で29.862%!(介護保険料込)

ほぼ30%ですね!

 

会社と個人折半で支払いますので。

社長は自分の給与明細を見て「こんなものか…」と感じたとしても。

実際にはその2倍を負担しているわけです。

月50万円、年間600万円の報酬の社長様で、年約180万円!

 

多くの中小企業では法人税や社長個人の源泉所得税よりも。

こちらの負担の方がはるかに大きかったりします。

 

余談ですが、法人化の節税効果をシミュレーションして持ってきた税理士事務所が。

社会保険料について計算に入れていないようであればご注意を

法人税+源泉所得税が個人所得税に比べて多少低くなるメリットなど。

こちらで吹き飛んでしまったうえに、大幅な逆効果になることもあります。

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社会保険料削減のコツ~報酬上限のカベ活用

現在では細かい法人税や所得税を削るより。

社会保険料を削る方が優先なケースも多いわけです。

 

さて、では社会保険料を削減するにはどんな方法があるでしょうか。

効果の大きい方法は「上限のカベ」をうまく活用することです。

 

福岡県の場合、定期同額給与にかかる標準報酬月額の等級上限は。

厚生年金が620,000円、社会保険が1,390,000円です。

これ以上であればどんなに月々の報酬を支給しても保険料は上がりません

 

それに対して、事前確定届出給与にかかる、賞与の料率上限は別枠です。

健康保険が年間573万円、厚生年金が月間150万円です。

 

では、同じ年間1200万円の報酬を支給する場合。

①「定期同額100万円×12回」を支給するのと。

②「定期同額80万円×12回+賞与120万円×2回」を支給するのとでは。

どちらが有利でしょうか。福岡県の料率表を見ながら計算してみましょう。

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事前確定届出給与を利用すると社会保険料が上がる!?

①のケース。

月額100万円の支給額に対する社会保険料は。

健康保険114,464円+厚生年金112,728円≒約227,000円。

年間1200万円に対して227,000円×12月=約2,724,000円となります。

 

②のケース。

月額80万円の支給額に対する社会保険料は。

健康保険92,272円+厚生年金112,728円≒約205,000円。

年間960万円に対して205,000円×12月=約2,460,000円。

そして120万円の賞与に対する社会保険料が。

健康保険140,160円+厚生年金218,184円≒約358,000円

これが年間2回ですので約716,000円。

先ほどの80万円の報酬分と足して約3,176,000円となります。

 

なんと、支給総額は同じなのに45万円も差が付きました!

年収1200万円の社長様にとって。

10年で450万円の差は決して安くないと思われます。

 

どこでこの差がつくのでしょうか。

下図にあるように、報酬上限額を超えた部分

いわば、社会保険の非課税枠を利用しているかどうかです。

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結局、手間をかけてわざわざ「ボーナス」という支給形態を取ることで

非課税枠を堂々と利用できる権利を放棄してしまうわけですよね。

 

ときどき、「税金は払うだけだけど、社会保険料は将来年金で返ってくるから」

と言われる方がおられます。

 

しかし健康保険料部分はいわば掛け捨てです。

それに、厚生年金という金融商品は。

半額を会社が負担してくれているサラリーマンならともかく。

半額会社負担の名のもとに実質的に自分の財布から出している状態の社長様にとっては。

支払総額と受給見込み額を冷静に計算して比較すれば

全く割りに合わないことがわかりますので、一度計算してみられることをおすすめします。

 

厚生年金を多めに負担する余裕があるくらいなら。

小規模企業共済やもっと割りの良い投資商品に振り向けるべきです。

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結論:事前確定届出給与を利用した方が良いケース

このように検討しますと。

この「事前確定届出給与」を利用した方が良いケースというのは。

かなり限られるかと思います。それは、

・社長の家族以外のサラリーマン役員が多数おり、賞与が慣例化している会社

・社長の報酬が年間約750万円以下で、かつ、どうしても期末に利益調整を行いたい会社

くらいではないでしょうか。

 

年間750万円以下というのは。

仮に月額を平準化したとしても社会保険料の非課税枠を利用できないので。

一部を賞与として支給しても、社会保険料の負担が変わらないラインです。

 

「事前確定届出給与」の利用を検討なさっている社長様や経理担当者様の。

ご参考になりますと幸いです。

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