法人なら、名目が何であろうと。
「利益×法人税率=法人税」だけですからわかりやすいのですが。
個人は、「株を売って出た利益」「配当の利益」「社債の利息」「償還益」…
名目によって「所得」やら「税率」やら違っていてややこしいですよね。
しかも、H28年からかなり改正がありますので、今年中にしておくべきをまとめてみました。
以下、「税務上は節税メリットがある」という点だけで挙げています。
実際の投資結果や株式保有の力関係など。
「節税」なんてことよりはるかに大切なこともありますよね。
決して「絶対こうしなさい!」とアドバイスしているわけではありませんので。
その点ご了承ください。
1.円安で含み益の出ている外国債券・MMFをお持ちの方。⇒一旦売る!
まず質問です。
40万円で買った株式を50万円で売却したら?
当然10万円の売却益に対して所得税が課税されますよね。
では、40万円で買った外国債を50万円で売却したら?
実は、一部の割引債などを除く大半のものは、現在「非課税」なのです。
なぜ?と感じますよね。
株は売り買いするものだけど、債券は満期まで持つもの、と思われていたからでしょうか。
でも実際は満期前に売却して換金することだってありますよね。
そして、その外国債券から派生した外貨MMF。
「安全性の高い外国債券に分散投資する投資信託」という位置づけですが。
実際は外貨預金や外国債券の購入のために証券会社に放り込んだ資金。
あるいは運用益をとりあえずこれで持っている、という方が多いのではないでしょうか。
証券会社の外貨預金、のようなイメージですよね。
こちらも、性質的には外国債と同じようなものですので。
収益分配金(利息のようなもの)は課税されても、現状、売却益は非課税なのです。
こちらは売却も何も。
単に証券口座から「引き出す」という感覚で日常的に売却しますよね。
このあたりの金融商品の「売却益が非課税」っておかしくないですか?
ということで、これらは平成28年から、ほぼ通常の株式と同じ課税方法となります。
~国税庁 平成25年度税制改正のあらましより
つまり、平成27年中に売却すれば値上がり益非課税。
平成28年に入ってから売却すれば20%課税、ということです。
なぜここを強調するかと言いますと。
ここしばらくの大幅な円安傾向で、外債・MMFをお持ちの方は。
おそらく相当利益が出ている方が多いと思います。
その皆様。
今年中に売却すれば非課税ですよ!
「まだ上がるかもしれないからもう少し持っていたい」って。
ならばいったん売って買い戻せば良いのです。
例えば1ドル80円の時に1000万円投資したMMFが、今ドル120円で1500万円、という方。
今年売却すれば1500万円全額が手元に残ります。
来年に1日でも食い込めば。
売却益500万円×20%で100万円は所得税に消えます。
まだしばらく持っておきたいのであれば、一旦1500万円で売却して利益を確定させて。
もう一度1500万円で同じものを購入します。
これを来年もう少し値上がりしてから売却したとしても。
購入価格は1000万円ではなく1500万円になっていますから。
今年からの値上がり分に対してのみ、所得税を負担すればよい状態になるわけですよね。
売却と購入の手数料のことは考慮に入れる必要がありますが。
2.事業承継で自社株を売却中の方。⇒含み損のある上場株式を売る!
本業、不動産の売却、株式の売却、債券の売却など。
いろいろな儲けや損があった場合。
法人なら全部通算して利益を計算するだけで良いのですが。
個人は、通算できるものと通算できないものがあります。
本業は1000万円の収入があるサラリーマンなのですが。
「株で大損して1000万円赤字を出しちゃったから今年の儲けは0円だよ!」
「給料から天引きされてる税金返してよ!」
ということはできないわけです。
株の損は他の株の利益としか通算できないからですね。
平成27年までは、この「損益通算できるグループ」は、
「株グループ」「債券グループ」という風に分けられていました。
上場株式の売却損と同族株式の売却益は通算できたわけです。
平成28年からこれが、「証券会社で一般的に買えるものグループ」
「関係者しか買えないものグループ」
というグループ分けに改正になります。
証券会社等で一般に購入できる「上場株式」と「公社債」。
これらの売却損益は通算できるようになりました。
一方、「上場株式」と「同族会社株式」はH28年から通算できなくなったわけです。
ですから、事業承継で年々同族株式の売却を進めておられる社長様。
その売却益を確定申告する際に、他に持っている上場株の含み損があるのであれば。
通算できるのは今年までですので、売却を検討してみてはいかがでしょうか。
3.ディファードペイメント債などの始末に困っている方。⇒今年中に売る!
私のクライアント様のところではお見かけしたことが無いのですが。
一昔前、こんな商品があったそうです。
海外銀行の1口1億円など、富裕層向けの大口社債で、金利10%!
飛びつきたくなる気持ちもわからないではないのですが。
よく見ると金利10%なのは当初2年だけで、その後はなんだかんだの算式によりほぼ利息0。
そして、償還期間が30年とかだそうです。
購入した方が当然3年目に、怒って証券会社の担当者を呼び出すわけです。
「これから利息なしで、しかも28年もたたないと償還できないなんてどういうことだ!」
全く悪びれず証券会社の担当者が言います。
「あの、何でしたらうちが5000万円くらいで買い取りますけど…」
「損の部分は総合課税ですので、損益通算できますよ。」
少し大げさかもしれませんが。
実は、利息が0のゼロクーポン債や、期間中の利息の変動が大きいものなど。
一定の債券は売却損益が総合課税の譲渡所得だったのです。
つまり損が出た場合、本業の利益と通算できたのですよね。
所得税・住民税の税率が50%超の富裕層の場合。
損した金額の半分くらいは税金で取り戻せたわけです。
この、なんとも中途半端な総合課税もH27年までです。
H28年からは本業との通算はできなくなりますので。
だまされた感で、なんだか悔しくてまだこの手の債券をお持ちの方がおられたら。
今年中に処分しましょう。
4.少人数私募債を検討中の方。⇒もはや無意味。却下する!
これも以前流行ったスキームです。
所得の高い社長がいかに低い税率で法人から利益を手元に移すか考えた時。
「給与で取れば給与所得控除は上限にあたっているので半分が税金。」
「会社の敷地・社屋の賃料をとっても不動産所得、総合課税でやはり半分が税金…」
「そうだ、きちんとした手続きを踏んで利息を取れば20%分離課税だ!」
銀行預金の利息、国税15%地方税5%が天引きされて、それで課税完結ですよね。
社債の利息も同じです。
それで、「少人数私募債」という同族会社の社債を発行して。
その社債を社長が購入して会社から利息を取る。
これなら税率20%で法人から現金を社長に渡せる!
というスキームがあったのですが。
こちらも平成28年から、
「同族会社が発行した社債の利子で同族会社の役員等が支払を受けるもの」は総合課税。
という改正が適用されますので、完全に意味がなくなってしまいます。
改正が決定してから少し時間がたっていますので。
もう今さら検討しておられる方もおられないかとは思いますが。
念のため取り上げてみました。
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