税理士試験は税法科目については「科目が選択である」変わった試験です。
「開業税理士」を目指すのと、単に「試験に合格する」のを目的とする場合で。
選択科目は変わってきます。
開業するのに欠かせない科目
税理士として開業した場合に、間違いなく毎年、申告書を書くのはどの税目でしょうか。
間違いなく必須なのは
・法人税法
・所得税法
・消費税法
です。
特に消費税法は税理士が損害賠償請求を受けてしまうミスが最も多い税目です。
・比較的最近(1989年)導入された税目であり、
昔から税理士をなさっている先生方は当時試験すらなかった
・届出手続が遅れると取り返しがつかず、
届出が必要なことに前もって「ピン」と来ないと致命的
…等の理由が考えられますが、とにかく勉強していないと怖くて仕事にならない税目です。
そして
・相続税法
も重要です。
経営者様は資産家も兼ねていることが多いですから、
・単年度の所得に対する税率(毎年の営業活動の成果)
・事業承継や相続の際の税率(累計の営業活動の成果)
どちらも理解していなければ最適なタックスプランニングの提案を行うことはできません。
実務と試験は違う?
たまに「実務と試験は違うから、税理士試験は受けてなくても実務には支障ない」
…と言われる方がおられます。
ただ、私はこのセリフ、
「税理士試験に受かっていないベテラン職員さん」からは聞いたことがありますが、
「税理士試験に受かっている先生」からは聞いたことがありません。
実務経験の長い職員さんが、皆そうというわけではありませんが、
「どうすれば良いかは覚えていても、なぜそうしなければならないかは知らない」
方を多くお見かけするような気がします。
実務の長い方は、先生や先輩の仕事を見て仕事を覚えておられます。
中には非常に勉強熱心で。
税法の条文に照らして根拠をひとつひとつ確認して行かれる方もおられると思います。
でも大半の方は、
「先輩がこうしていたから」
「マニュアルでこうなっていたから」
これで問題ない、というレベルで仕事を身に着けて行かれます。
ですので、パターンにはまるクライアントさんの業務は猛烈なペースでこなせます。
しかし少しイレギュラーなことが起こるととたんに思考停止してしまいます。
税法の根拠を理解して業務にあたっているわけではないですから。
「先輩がしたことがない」「マニュアルに書いてない」ことには対応できないのです。
独立開業しないのであればこれで良いのです。
でも、開業するにはこれでは不十分です。
開業しますと、クライアント様に、そして調査の際には税務署に、
「なぜ、どんな根拠でこの処理をしているのか」
自分の責任で説明しなければなりません。
まだクライアント様には「一般的にはこのようです」でごまかせるとしても。
(ごまかしているようではいけませんが…)
税務署から指摘を受けた際に、
「先輩税理士もこうしていたからですね…」などと弁解しても弁解になりません。
税理士試験の試験勉強ではとにかく条文を暗記して。
それが実際の取引にどう当てはまるかを学んでいきます。
これは、税理士事務所に勤務して。
流れ作業をこなすのであれば、多少役に立つ程度かもしれませんが、
独立開業を目指すのであれば必須の学習です。
ボリュームの多い科目は合格しにくい?
でもそうは言っても法人税法・所得税法・相続税法はとにかくボリュームが多いです。
特に仕事をしながら受験される方。
これらを避けて酒税・事業税などに流れる方も多いようです。
しかし、注目したいのは合格率はどの科目もさほど変わらないという点です。
ボリュームの少ない科目を受験しているのはさほどやる気のない人ばかりなのであれば。
その中で合格する方が簡単かもしれません。
でもどの科目の受験者だって必死です。
ボリュームの少ない科目を受験されている方の方が。
勤務しながら、切羽詰って必死な方々かもしれません。
ボリュームの少ない科目だからといって、合格しやすいわけではないと思います。
自分も実は滑った年。
ラスト1科目だったのですが所得税法と国税徴収法で2つ受けていました。
1年に一回しかない税理士試験。
不合格の通知を見た時の「またもう一年か…」というがっかりは非常につらいものです。
バイト受験生生活を長引かせたくなかったので。
どちらか受かれば良いという保険の意味で受けました。
でも国税徴収法は、どうもモチベーションが上がりませんでした。
所得税法と違って、「そうそう実務では使わないだろう」と感じながらですので。
なんとなく身が入りませんでした。
結果、2つとも滑りました。
翌年、所得税法1本で、相当集中して臨みました。受かりました。
最初からそうしていれば、合格はもう1年早かったかもしれません。
モチベーションを上げる意味、将来開業したときのための準備、ということを考えると
・法人税法
・所得税法
・相続税法
・消費税法
この中から3科目選択がベストではないでしょうか。
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