前回の記事では「生命保険がどのように節税になるのか」イメージをつかんでみました。
今回の記事では、実際どれくらい効果があるのか。
単純なモデルケースで試算してみたいと思います。
◆前提◆
・生活費に十分な役員報酬を支給した後の、法人に残る利益 年400万円
・資金安全余裕を考慮して、このうちの半額200万円で保険をかける。
・10年営業した後、残った利益は退職金で全て支給し解散
・11年目は営業無しで、保険解約と同時に退職金支給
実際は10年目の営業に課税されないよう10年目で退職金を支給した方が良いとか、
法人税の均等割とか、
いろいろと細かい点はあるのですが。
今回は単純に「節税効果」がわかりやすいように、おおざっぱに下記のように試算してみます。
退職金にかかる税金については、説明を省略しますのでこちらCASIOさんのサイトをご参照ください。
比較ケース①保険を利用した節税対策なし
(1)法人税等
①毎年の支払額 400万円×25%=100万円
②10年間支払額累計 100万円×10年=1000万円
(2)退職金にかかる所得税・住民税
①退職金の額 400万円-100万円=300万円(毎年の税引後利益)
300万円×10年=3000万円
②所得税等 → 約410万円
(3)支払うこととなる税金合計
法人税等1000万円+所得税等410万円=1410万円
(4)受け取れる退職金
3000万円-約410万円=約2590万円
4000万円の利益に対して約1410万円の税金を支払って。
退職時には2590万円を受け取ることになりますね。
比較ケース②理想的な例:全額損金になり、100%返戻のある保険を毎年200万円かけた場合
(1)法人税等
①毎年の支払額 (400万円-200万円)×25%=50万円
②10年間支払額累計 50万円×10年=500万円
(2)退職金にかかる所得税・住民税
①退職金の額
(A)400万円-200万円(保険)-50万円(税金)=150万円(保険以外の毎年の利益積立額)
150万円×10年=1500万円
(B)200万円×10年=2000万円(保険の解約による収入)
(A)+(B)=3500万円
②所得税等 → 約520万円
(3)支払うこととなる税金合計
法人税等500万円+所得税等520万円=1020万円
(4)受け取れる退職金
3500万円-約520万円=約2980万円
4000万円の利益に対して約1020万円の税金を支払って。
退職時には2980万円を受け取ることになりますね。
毎年の法人税が保険掛金の25%圧縮されますので、その分退職時に多く受け取れるわけです。
このケースでは2980万円-2590万円で約400万円も差が付きました。大きいですね。
しかし前回の記事でも書いた通り。
実際にはこのような使い方をする保険の大半は1/2しか経費になりません。
また、保険の営業マンさんが勧めるものの中には。
解約した時には80%から90%くらいしか戻ってこないものも多いです。
では、次のケースではどうでしょうか。
比較ケース③現実的な例:半額損金になり、80%返戻のある保険を毎年200万円かけた場合
(1)法人税等
①毎年の支払額 (400万円-100万円)×25%=75万円
②10年間支払額累計 75万円×10年=750万円
(2)退職金にかかる所得税・住民税
①退職金の額
(A)400万円-200万円(保険)-75万円(税金)=125万円(保険以外の毎年の利益積立額)
125万円×10年=1250万円
(B)200万円×10年×80%=1600万円(保険の解約による収入)
(A)+(B)=2850万円
②所得税等 → 約380万円
(3)支払うこととなる税金合計
法人税等750万円+所得税等約380万円=約1130万円
(4)受け取れる退職金
2850万円-約380万円=約2470万円
なんと、何も対策をしなければ2590万円受け取れたのに。
今回のケースでは2470万円しか受け取れなくなってしまいました。
支払う税金は1410万円から1130万円に300万円近くも減っているのになぜでしょう?
それは、
2000万円かけた保険が80%しか返ってこなかったため400万円も目減りしてしまったからですね。
税金は減りましたが、自分の手元に残るお金まで減ってしまったのでは本末転倒です…
まとめ:法人生命保険節税スキームの注意点
「節税になりますよ」と言われたので何となく入った生命保険。
私の経験では、きちんと上記のように最後の受取時の税金まで計算に入れると。
ケース③のような結果になっているものが多いです。
もちろん、経営者にもしものことがあった時のための、本来の生命保険の役割もあります。
ですのでそのような保険契約が全て悪だとは思いません。
営業マンさんも善意で勧めてくれたのでしょう。
しかし、ケース③のような保険を「税効果も考慮した返戻率は100%を超えます!」
などとうたって契約させるのは個人的にはどうかと思います。
超えてないですよね。どう考えても。
たいていのパンフレットでは節税額を大きく見せるために。
法人税の税率を40%弱に設定しています。
中小法人なら毎年800万以上!
法人利益を計上し続けていないと当てはまらない前提です。
「税金まで考えると最終的には目減りしない」と勘違いさせられて加入されている方。
多いのではないでしょうか。
是非、契約される前に、この記事のように。
「最後の解約から受け取りまでかかる税金」も含めて、一度試算されることをお勧めします。
次の記事ではこれを踏まえて、損をしない法人保険契約の加入の仕方を考えてみたいと思います。
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