【短期前払費用】についての誤解-必ず「期末日」に振り込まなきゃいけない?

きちんと経理で【節税】

前回に続いて細かい税務ネタです。

先日、毎期末、大家さんに。

一年分の家賃を前払いしているクライアント様から電話がかかってきました。

「前の税理士さんから必ず期末日に振り込むように言われてたのですが」

「期末日が土日の場合どうすれば良いのですか?」 …??

まず、「何故、【期末日】に振り込まなきゃいけないと思っておられるのかな??」

というところからわからなかったのですが。

「前の税理士さんから言われた」という一言が気になりました。

…念のため、確認して折り返すことにしました。

 

短期前払費用の特例

関係するのは、いわゆる【短期前払費用の特例】と呼ばれている通達です。

 

法人税法基本通達

2-2-14 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)

 

例えば3月決算の法人が、12月に翌年一年分の家賃やリース料などをまとめて払った場合。

本来は、支払った12か月分のうち3か月分が今期の費用。9か月分は来期の費用。

9か月分は前払費用として、今期の経費からは外し、来期に回すことになります。

 

このように本来前払費用は今期の損金には落ちないのですが。

細かいものまでこんな月割計算をしだしたらきりがありません。

会計の「重要性の原則」、つまり大きな影響のない細かい処理については。

必ずしもすべて厳密にすることまで求めませんよ、という原則にのっとって。

 

法人税法上も、来期1年以内に終わる前払費用であればわざわざ月割計算までせず。

今期に経費にしてしまってよいですよ、という通達があるわけです。

(継続的な役務であるとか、等質等量でなければならないとか細かい要件はあります)

 

【期末日】に振り込まなきゃいけない?

さて、ではなぜ前の税理士さんは「期末日」に振り込むよう言ったのでしょうか。

通達を改めてよく見ると…

「支払った【日】から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合」

と、確かに書いてますね。

 

なるほど!厳密にこれを解釈すればこんな風になります。

 

キャプチャ

確かに!

3/25日に支払った場合、一年以内に効果が到来しないですね。

6日分足りません

 

ではこの場合、この6日分は経費にならないのでしょうか。

もっと恐ろしいことに、そもそもこの支払は「短期前払費用」に当たらないとして。

ほぼ全額損金にならないのでしょうか!?

 

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短期前払費用、「期末日」に振り込む必要はありません

おそらく「前の税理士さん」はそんな風に思っておられたのでしょう。

ですが、この通達の成り立ち。

「重要性の乏しいものまで厳密に案分計算しなくてよいですよ」

という意図から考えれば。

たったの6日分を細かく指摘するのは明らかに筋違いです。

 

実は国税庁のタックスアンサーにこんな回答があります。

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ホーム>税について調べる>質疑応答事例>法人税目次一覧>短期前払費用の取扱いについて

短期前払費用の取扱いについて

【照会要旨】

 当事者間の契約により、年1回3月決算の法人が次のような支払を継続的に行うこととしているものについては、…その支払額の全額をその支払った日の属する事業年度において損金の額に算入して差し支えありませんか。

事例1:期間40年の土地賃借に係る賃料について、毎月月末に翌月分の地代月額1,000,000円を支払う。

事例2:期間20年の土地賃借に係る賃料について、毎年、地代年額(4月から翌年3月)241,620円を3月末に前払により支払う

事例3:期間2年(延長可能)のオフィスビルフロアの賃借に係る賃料について、毎月月末に翌月分の家賃月額611,417円を支払う。

事例4:期間4年のシステム装置のリース料について、12ケ月分(4月から翌年3月)379,425円を3月下旬に支払う。

事例5:期間10年の建物賃借に係る賃料について、毎年、家賃年額(4月から翌年3月)1,000,000円を2月に前払により支払う

【回答要旨】

・ 事例1から事例4までについては、照会意見のとおりで差し支えありません

・ 事例5については、法人税基本通達2-2-14の適用が認められません

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事例4の「3月下旬」はOK、事例5の「2月」はアウト!

となっていますね。

 

この通達の成り立ちや原則から考えれば、期末日にこだわる必要がないのは当然です。

ですが、なし崩し的に何でもOKとはならないよう。

2月、というところでは予防線が張られているようです。

 

「3月下旬で振り込んでおられれば、全く気にする必要はありませんよ。」

とクライアント様に連絡しました。

 

 

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