【良い税理士・悪い税理士の見分け方】~税理士業界の流れから考える

上手な税理士との付き合い方

ここ1年ほど、多忙のため、非常に心苦しいながら新規依頼をお断りしています。

その旨をお伝えすると、代わりに「誰か良い税理士さんを紹介していただけませんか?」

と言われることがあります。

特定の人を紹介することは難しいので、せめて「良い」税理士の見分け方だけでも。

お伝えしたいと思いました。

 

「良い」「悪い」ではありません。ニーズに「合う」「合わない」です。

「今の税理士さんが良くないので…」と言われる方のお話を時々伺います。

多くの場合感じるのは、「良い」「悪い」というよりよりもどちらかというと。

「合う」「合わない」

 

性格が「合わない」。

ニーズに「合わない」。

 

そんな時、税理士が「良くない」という印象になります。

でも、その税理士さんにも当然仲良くしているクライアントがいるはずです。

そのクライアントには「合っている」わけです。

 

性格面でいえば、「何かと気を遣う、おせっかい」タイプか。

淡々と「最低限すべきことのみする」タイプか。

「法律をきちんと守りつつ、クライアントの最善を考える」タイプか。

「お主も悪よのう!わしがばれないようにかばってやろう」タイプか。

 

ニーズ面でいえば、「何もかも引き受けますよ、高いですけど」タイプか。

「安いですよ、ただし単純作業しかしませんよ」タイプか。

「自社でできることはして下さい、相談料だけでよいですので」タイプか。

 

私は好きではありませんが。

「お主も悪よのう!」という税理士が良い、という人も中にはいるでしょう。

その人にとってはその税理士が「良い」税理士であるはずです。

 

ですから、その税理士がどのタイプか。

見分けられれば、自分にとって「良い」税理士を見つけやすくなるはずです。

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税理士の「性格」の見分け方

一昔前まで、「性格」を見分ける、などと言いますと。

会って話す以外にほとんど方法はありませんでした。

しかし、ただでさえ敷居が高く感じる「税理士事務所」。

何軒も「会って話して回る」なんて、なかなかハードルの高い作業です。

 

しかし今ではインターネットがあります

業者に丸投げして作らせた、テンプレート感満載のサイトはともかく。

本人がブログを書いていたり。

FacebookやTwitterで情報発信しているような税理士さんなら。

会わなくても、文章からかなりの程度。性格を読み取ることができるでしょう。

 

「ニーズ」に合った税理士の見分け方

その税理士が「ニーズ」に合っているか、検討しやすくするために。

税理士事務所の業務を(私見で勝手にですが)タイプ別に分類してみました。

インターネットで検索しただけでもすぐに、おおむねどのタイプかは判別がつきます。

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①コンサルティングファーム型(右上)

数十人のスタッフがおり、しかもその半分以上が税理士有資格者、というような。

エリート大型事務所です。

スタッフ紹介のページに有資格者がリストのように並んでいるのですぐに見分けがつきます。

 

一人では抱えきれないような大型案件を扱う事務所ですので。

主なクライアントは大企業や、上場準備中の企業です。

いわば税理士事務所業界の「大企業」です。

 

しかし「大企業」を維持するには、それなりに収入が必要です。

他の業界でも、BtoBで大企業が相手にするのはやはり大企業。

中小企業が依頼したとしても、高いわりに専門的なニーズがない。

値段に「合わない」という結果になることが多いと思われます。

 

②激安記帳代行型(右下)

実は、多くの方のイメージになっている「昔ながらの税理士事務所」は。

全て「右下」タイプです。

「えっ、全然”激安”のイメージなんてないけど」と思われるでしょう。

 

昔は、「記帳代行」、つまり帳簿と申告書の作成が税理士事務所のメイン業務でした。

私も18歳で初めて勤めた事務所の倉庫で、昔の手書きの総勘定元帳を見たことがあります。

「こんな気の遠くなる作業をしていたのか…」と絶句しました。

昔は「記帳代行」は大変な作業で、これだけで料金が請求できたのです。

 

しかし、パソコンと会計ソフトの税理士業界への普及により状況は一変しました。

「記帳代行」は簿記の知識と電卓の技術の必要な専門職から。

パートを集めてパソコンをたたかせていれば完結する作業に変わりました。

ですので、外回りのできる税理士や古株の社員一人に。

パートさんを3人から5人つけて、いわば「自動記帳代行工場」のようなことをする。

これが10年から20年ほど前、税理士事務所の主流スタイルとなりました。

 

しかしさらに一般にも安価な会計ソフトが普及し始めると。

クライアントは自社で「記帳」が行えるようになります。

私見では「記帳」は基本的に自社で行うべきです。

一昔前の「記帳代行工場」型税理士事務所の仕事のスケジュールは下記のようになります。

キャプチャ

クライアントの4月の業務が終了するのが①、月末です。

末締めの請求書等がそろい、末締めの請求や給与計算が終わり。

試算表を完成させられるだけの資料が揃うのが②、翌月5月の5日から10日頃です。

この後のタイミング、翌月中旬から下旬の③でようやく税理士事務所が資料を取りに来ます。

それからようやく記帳作業がスタートです。

そして月2回訪問の少し料金が高めの契約でなければ。

6月、同様にして5月分の資料を取りに来る6月中旬から下旬の④で。

ようやく4月分の試算表を税理士事務所が持って来ます。

 

6月の下旬にようやく4月分の試算表を見る。

私も昔、社長から「先々月の損益、今頃見てもね…」と言われて。

「ですよね…」と内心思っていた時期がありました。

しかしこれが記帳丸投げ工場型税理士事務所の宿命です。

 

自社で記帳ができていれば。

細かい修正等はあるにしても、①のタイミングで資金等は粗々把握でき。

②のタイミングである程度の精度の試算表が上がります。

社長は翌月上旬にきちんと先月の業績を把握できるわけです。

 

しかし、昔ながらの事務所は「記帳代行」しかできないスタッフを大勢抱えています。

こうなると自社パートさんとの価格競争をしてでも「記帳代行」をするか。

もしくはクライアントが自社で行った記帳をチェックする業務に多少もったいをつけて。

「巡回監査」などと称して記帳代行スタッフを行かせて料金を請求するか。

いずれかしかありません。

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このタイプの税理士事務所はインターネット上でもすぐに見分けがつきます。

帳簿生産工場ですので、スタッフ、特にパートさんが大勢います。

そして、①のコンサルティングファーム型事務所と違って。

有資格者はその中の数人だけです。

そして、ホームページ上で「新規創業者割引」などをうたい。

あきらかに小規模の企業をターゲットにしています。

 

費用をとにかく抑えたい、最低限の流れ作業で良い、というニーズにはぴったりです。

ですが、この場合の税理士報酬は「税理士への相談料」というよりも。

「記帳代行工場のスタッフ利用料」です。

通常税理士が行う会計データのチェックや分析は自社で行う覚悟が必要です。

 

「親身になってくれない」

「担当者がコロコロ変わる」

「相談してもなかなか返事が返ってこない」

という不満を抱くのはお門違いです。

そもそもそういうサービスを売りにしている形態の事務所ではありません。

 

このタイプの税理士事務所に依頼するなら、決め手は「安さ」です。

なのに料金だけは昔ながら、ということになると…

 

③OB、定年後の先生(左下)

規模が小さい、専門的な業務はしない、そんな事務所あるの?

と思われるかもしれませんが、実はたくさんあります。

 

以前の記事にも書きましたが。

実は税理士試験に受かって税理士になっている税理士は半分以下。

かなりの人数を税務署に一定期間勤めて税理士資格を得た、

いわゆる「OB税理士」さんたちが占めています。

 

中にはバリバリ仕事をなさっておられる方もおられます。

ですが、かなりの割合の先生が、定年後の「老後の趣味」という程度に。

資格登録して、知り合いの仕事や確定申告期の税務署の応援等をなさっておられます。

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業務拡大等はそもそも考えておられないことが多いので。

インターネットで検索した場合、これらの先生がヒットすることはまずありません。

 

 

④専属サービスマン型(左上)

若い税理士はこれからこのタイプが増えていくと思います。

スタッフはほとんどおらず、税理士自身がクライアントを訪問し。

記帳・申告の指導、税務相談、税務調査立ち合い、資金調達、保険提案。

事業承継や相続に関連した相談に応じ。

主に「記帳」ではなく「相談」業務で報酬を請求するタイプです。

 

私がそう考える理由は、②でも書きました時代の流れです。

昔ながらの税理士事務所は。

なんとか「記帳代行業務」や、それに毛の生えた程度の「監査業務」で。

料金を請求し続けようと工夫をしていますが。

もう間もなく限界が訪れるはずです。

 

Freeeをはじめとするクラウド会計の普及により。

これからは単純作業は「工場」どころか「ソフト」が行うようになります。

そうなると、クライアントのニーズとして残るのは。

単純流れ作業ではなく「相談業務」だけです。

 

クライアントから直接質問を受ければ誰でもある程度は応じられます。

しかし、クライアントが抱えている悩みを親身になって引き出したり

気が付いていない課題への対策をこちらから提案したり

このような提案型の業務を行うには、かなり深い信頼関係が必要です。

 

担当者がころころ変わったり、単純業務以外のことには答えられないような状況では。

そのような信頼関係は築けません。

税理士が直接訪問して人と人との関係を築く事務所

中小企業にとってはこのタイプがこれからは主流になっていくのではないかと思います。

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このタイプの税理士さんは、若いですしITにも強いことが多いので。

多くの場合自分でホームページを立ち上げ、自分で更新しています。

ですので検索すればすぐに見分けがつきます。

 

 

このような税理士業界の流れや特徴をつかんだうえで。

インターネットでヒットした税理士事務所がどのタイプの事務所なのかをまず把握するなら。

きっと「合う」税理士、「良い」税理士に。

出会えることが多くなるのではないでしょうか。

 

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