「解約返戻率100%前後の生命保険が半額とはいえ経費になる」
なんだか不思議な気がしませんか?
100%返ってくるのなら積立預金と同じですよね。どうして経費になるのでしょうか。
「理屈がわからないとなんだか不安で導入できない」という理性的な経営者様、是非続きをお読みください。
長期平準定期保険が経費になる理由
税法の基本的な考え方です。
「資産性のあるものは資産であって、それが消滅するまで経費ではない。」
例えば事務所を借りる時の礼金は経費です。返ってきませんので。
でも敷金は返ってきます。
もしくは退去時の修繕費に充てることができます。
ですから一部償却されて返ってくるまで、または退去するまで経費になりません。
この考え方がそのまま保険にも当てはまります。
法人が法人を受取人とする保険を掛けた場合、
・養老保険(満期で必ず受け取れる)
・終身保険(いつか必ず受け取れる)
などの資産性のある保険は積立預金と同じと考えます。
ですのでこれらは全く経費になりません。
一方、
・定期保険(掛け捨て)
・医療保険(掛け捨て)
などの資産性のない保険は掛けた段階で経費となります。
では、1/2損金と言われる長期平準的保険とは何なのでしょうか。
あれは、掛け捨ての保険なんです。
実際、保険期間の満期まで継続しますと、1円も受け取れません。
掛け捨てなんですから。
掛け捨てなのになぜ、解約すると場合によっては100%近く返戻があるのでしょうか。
生命保険の保険料は、死亡率に応じて変わります。
毎年同じ保険金額の死亡保険を更新してかけて行った場合。
保険料はじわじわと上がり、ある年齢を境にぐんと高くなります。
でも年々保険料が上がっていくのは皆嫌がります。
それで、最初から最後まで保険料は変わりません、ということを売りにする保険ができました。
この保険、要は前半は後半の保険料を前払いしていることになるわけです。
長期平準定期保険のイメージ
年々上がっていく保険料の、後半部分を前に持って来て、保険料を平準化しているわけです。
では上の図で、例えば9年目くらいに解約したらどうでしょうか。
払い込んである保険のうちの、まだいくらも消化していません。
これは返してもらえます。
しかも保険会社は運用していますから、運用益もおまけでついてきます。
下手をすると払込額の100%前後、返ってきます。
でも、この保険、あくまでも掛け捨てなんです。
ですので、昔は全額損金でした。
でもこれを利用して損金を作る事例が多発したためでしょうか。
現在は通達により前払い時期については1/2のみ損金、ということになりました。
1/2に制限されたとはいえ、100%近く返ってくるケースのある保険です。
一部でも損金になるなら使おう、ということで多くの法人様が利用なさっておられます。
国税庁側が、「1/2損金なら認めます」と言ってくれているわけですから、安心感がありますよね。
さらにすごい、逓増定期保険
長期平準定期保険を最初に考えた方、なかなかすごいと思います。
解約金が多額でありながら、あくまでも掛け捨てという発想はなかなか出ません。
しかし、さらに上を行く保険を考えられた方がおられたようです。
毎年同じ保険金額で保険を更新しても、保険料は上がっていきます。
では、高齢になるほど死亡保険金が高くなる保険を設定したら?
しかもその払込を毎年定額にしたら?
逓増定期保険のイメージ
毎年の保険料の上昇のカーブがさらにきつくなります。
ですので、最初の数年間の保険料は、限りなく100%に近いくらい前払分になります。
保険期間の初期で解約すれば、これに運用益がついて返ってきます。
こちらは年齢や条件によっては返戻率100%を余裕で超えるものもあります。
しかし、こちらもあくまでも掛け捨ての保険です。
ですから、保険期間等に一定の条件はありますが、こちらも1/2損金が認められています。
国税庁が、通達で認めてくれています。
最近まで「全額損金法人がん保険」など。
「まだ国税庁からダメとは言われていないだけで良いとは全く言われていない保険」
がよく利用されていました。
このような保険はいつ税制が変わるかわからないリスクを抱えています。
実際がん保険にも最近メスが入りました。
その点、長期平準定期保険や逓増定期保険は、一旦メスが入って通達が出来上がっているものです。
導入のリスクはその分低いと言えそうです。
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