「税務調査に入られて、ものすごい税金を取られたよ…」
よく聞く話です。
でも、この話を「よく聞く」って、よく考えるとすごいことです。
名誉な話でもなく、他人に話したい話ではありません。むしろ隠したい話です。
にもかかわらず「よく聞く」のはなぜでしょうか。
一つにはやはり、金額的なショックが大きいことが挙げられるかもしれません。
統計から見る…みんな、調査に入られて、どれぐらい追加で税金払ってますか?(福岡)
以前の記事でも引用した、福岡国税局管内の1年間の税務調査の結果の統計です。
法人に関してですが、調査による指摘のあった件数は3966件。
追徴税額が74.75億円ですので福岡・北九州では平均1件当たり200万円弱ということになります。
「平均」ですから、当然これよりも少ない案件も多々あります。
そしてはるかに高い金額の案件もあるはずです。
平均200万円。
みんながみんな、そんなあくどい事ばかりしていたわけではないでしょう。
なぜこんな金額になるのでしょうか。
金額が大きくなる理由~加算税・延滞税
実は、税務調査で発見された場合、「加算税・延滞税」といわれるものがつきます。
少し考えてみてください。
普通に申告して1000万円納税している人がいます。
同じ稼ぎでありながら、ごまかして、300万円で済ましていた人がいます。
調査で見つかった場合、差額の700万円だけ請求されるとしたらどうでしょうか。
見つからなければ儲けもの、と考えて、300万円で申告する人が後を絶たないでしょう。
このようなことが無いように、調査で後から発見された場合。
まず、少なく申告していたことに対するペナルティとして。
「加算税」という罰金的な性格の税が課せられます。
「少なく申告」といっても、単純ミスのこともあれば、明らかに意図的な脱税のこともあります。
そもそも申告していないケースも悪質度合いは高いですよね。
これらの人が、ただミスしただけの人と同じ扱いでは不公平です。
ですので加算税には
・「過少申告加算税」
・「無申告加算税」
・「重加算税」 と、悪質さの度合いに応じた税率が設定されています。
そして、本来ならば数年前に払っていなければならなかった税額の払いが遅れているわけです。
遅れた期間に対して、「延滞税」という利息的な性格の税も課せられます。
さて、これで本来納付するはずだった差額から、どれくらい膨らむでしょうか。
モデルケースで試算してみましょう。
税務調査はほとんどの場合、3年分まとめて入ります。
平成22年3月期、23年3月期、24年3月期の3期分に、平成25年10月、調査が入ったとします。
本来毎年100万円の法人税を払うはずだったのに、50万円で申告していたとします。
ケース1は、社長の奥さんに払っていた給料が高すぎると否認されたケースです。
見解の相違、のレベルです。さほど悪質ではありません。
ケース2は、架空の人物を外注先にして外注費を計上し、社長がポケットに入れていたケースです。
明らかに故意の脱税ですね。悪質です。
モデルケース1.さほど悪質ではないケース(過少申告加算税)
①平成22年3月期分
本税…50万円
過少申告加算税…5万円(50万円未満は10%、50万円以上は15%)
延滞税…2.15万円(50万円×年利4.3%/365日×日数365日)
合計…57.15万円
②平成23年3月期分
本税…50万円
過少申告加算税…5万円(50万円未満は10%、50万円以上は15%)
延滞税…2.15万円(50万円×年利4.3%/365日×日数365日)
合計…57.15万円
③平成24年3月期分
本税…50万円
過少申告加算税…5万円(50万円未満は10%、50万円以上は15%)
延滞税…2.15万円(50万円×年利4.3%/365日×日数365日)
合計…57.15万円
①+②+③=171.45万円
本来払うはずだった150万円が171.45万円に増えてしまいました。
率にして約1.14倍ですね。
以外に大したことがないように思えるのは、延滞税の日数の部分が影響しています。
実は、悪質でない、計算ミス的な指摘による修正であれば。
何年もあとに来た調査で何年分も利息を払うのはさすがにかわいそうという理由なのでしょうか。
最長でも1年分までの利息でよい形の制度になっています。
モデルケース2.悪質なケース(重加算税)
①平成22年3月期分
本税…50万円
重加算税…17.5万円(35%)
延滞税…7.35万円(50万円×年利4.3%/1249日×日数365日)
合計…74.85万円
②平成23年3月期分
本税…50万円
重加算税…17.5万円(35%)
延滞税…5.2万円(50万円×年利4.3%/884日×日数365日)
合計…72.7万円
③平成24年3月期分
本税…50万円
重加算税…17.5万円(35%)
延滞税…3.05万円(50万円×年利4.3%/518日×日数365日)
合計…70.55万円
①+②+③=218.1万円
本来払うはずだった150万円が、218.1万円まで増えてしまいました。
率にして実に1.45倍!ほぼ1.5倍ですね。
重加算税の率が先程の過少申告加算税の率よりはるかに高いこと。
そして、悪質ですので容赦なく利息が課せられることが原因です。
今回は単純に同じ3年分で比較しました。
が、あまりにも悪質な場合は、5年分までさかのぼって指摘を受けるケースもあります。
こうなると完全に「倍返し」ですね。
税務署から「倍返し」の指摘を受けないために
税理士とよく意思の疎通がなされている経営者様の所で、こんなひどいことになるケースはまれです。
たいていは、
・税理士に節税を相談しても手ごたえがないので、経営者様自身が浅知恵を絞られたケース。
・税理士にも隠してこっそりしておられたケース。
・そもそも税理士を頼んでいないケース。
・ごくまれとは思いますが、悪徳税理士が関与していたケース。
これくらいでしょう。
重加算税をかけられるようなバレバレのやり方は、まともな税理士ならば絶対に止めます。
代わりに、きちんと法に基づいた節税を提案してくれる税理士と、お付き合いされることをお勧めします。
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