経理の科目でよく迷うところです。
「これ、福利厚生費でいいの?給与加算で源泉徴収しなきゃいけない?」
よく迷うところということは、よく調査で争われているところでもあります。
前例や通達がたくさんあります。「知っている」ことで、上手に節税できます。
そもそも「福利厚生費」と「給与」の境目とは?
従業員さんに給料を25万渡したいとします。
現金で渡せば当然、この25万に対して源泉税を計算して天引きします。
手取りが減ってしまうわけですよね。
ある社長様は考えるわけです。
「この従業員、家賃10万の家に住んでるよね。
給料は15万にして、家賃を会社で持ってやれば!
15万で家族持ちならほとんど税金引かなくていいぞ!」
…これが全部まかり通るようになると、税金払う人がいなくなります。
ですので、
・家賃を負担するならどれくらいまで、
・食事を支給するならどれくらいまで、
・プレゼントや旅行などならどれくらいまで、
なら「福利厚生費」でよいけど、超えたら「給与」ですよ。
現金支給の給料と合算して源泉税納めてくださいね。
ということが決まっているわけです。
従業員の慰安旅行についてはどれくらいまで「福利厚生費」でOK?
国税庁のタックスアンサーに。
慰安旅行についてはこれくらいまでならOKという事例が載っています。
4泊5日はOKで、5泊6日はOUT、
一人あたりの会社負担10万はOKで、15万はOUT、となってますね。
他の通達などを見ると、他にも
・旅行の参加行事が一般的であること
・従業員全員を対象とし、旅行に参加した人数が全体の人数の半分以上であること。
・自己都合による不参加者に金銭を支給しないこと
などの要件を満たしていないとOUTですよ、ということが書いてあります。
もっとも、これは税法に書いてあるわけではなく、国税の側で
「これをオーバーしたら取り締まりますよ」
と、いわば勝手に作っている基準です。
そんなもの知るか!と威勢よくこれに挑まれた方が、最近裁判を起こしたようです。
東京地裁平成24年12月25日判決-高すぎる慰安旅行費はやはり給与課税!
土木建築工事の請負をしておられる会社の慰安旅行について争われた事例です。
この会社。
代表者,従業員10人、外注先の従業員及び一人親方21人の合計32人を参加者として。
マカオへの2泊3日の慰安旅行に行かれたそうです。
その費用なんと800万円!
1人当たり24万1300円の従業員10名分合計241万3000円。
これを福利厚生費として経理処理して源泉徴収はしませんでした。
裁判では、
「そもそも金額がいくらであろうが、
従業員が自分の財布に入れられるわけではないものを給与として課税されるのはおかしい!」
と、通達もタックスアンサーも知ったことではない、
というスタンスの主張をされたようです。
ここまでいくと何だか潔い、爽やかなものを感じます。
しかし判決文によりますと。
1人当たり24万円の旅行は、やはり
「社会通念上一般的に行われている行事と認めることはできない」
として、納税者側の敗訴に終わったようです。
確かに、国税の側で決めた基準にのっとって経理処理するのは。
なんだか国税主導で基準を決められているような気がするかもしれません。
でも、逆に言えば。
「この範囲内であればOKですよ。」
と、国税が事前に手の内を明かしてくれているようなものです。
無駄に喧嘩することなく、その範囲で節税していけばよいのではないかと思います。
コメント