それ、本当に節税ですか?②不動産投資で法人税節税

こんな【節税】は要注意

先日、少し羽振りの良い社長さんから、

「不動産屋さんから“節税になりますよ!”って投資物件勧められてるんだけど。

自分が聞いてもよくわからないから話を聞いてくれないですか。」

と依頼されました。

相続税対策のために現金や上場株式を不動産に替えて評価を下げることはよくありますが。

法人税?

あまりピンとこなかったのでとりあえず話を伺ってみました。


Banking District / bsterling

生命保険を使った節税についての以前の記事でも書いたように。

法人税の節税対策と言われるもののほとんどは、

・利益をなんとか損金にして将来に収益を繰り延べる

ことを主眼にしているものが多いです。

伺ってみたところ今回の話も、要はそのパターンでした。

 

不動産投資節税スキームの概要

まず、築22年以上の賃貸物件の木造建物を購入します。

仮にこれを2000万として、土地が1000万、建物が1000万とします。

家賃収入から固定資産税や保険料を引いた利回りが5%、年間100万とします。

建物の減価償却費は、もう耐用年数を過ぎていますから、

22年×0.2=4.4→4年 で4年定額法

1000万÷4年=年250万

となります。

 

ですと、当初の4年間の損益は、

100万(物件収益)-250万=△150万(赤字)

と、4年間、150万ずつ経費が作れます。

この後は100万ずつ収益が生まれるわけですが、適当なところで売却します。

仮に5年目の最初の時期に購入価格の2000万で売れたとすると、

2000万(売却価格)-{2000万(購入価格)-250万×4年(既に減価償却した額)}=1000万

1000万が収益に上がり、これは課税対象になりますが。

要は最初の4年間経費を作って繰り延べたものが600万含まれているわけですよね。

確かに「利益をある程度将来に繰り延べる」ことはできそうです。

 

また、不動産屋さんが言うには、

「例え最終的に売却する際値下がりしていても、

それまでに生んだ収益以下に値下がりしなければ損にならない」

(上記の例でいえば1600万以下)

「それを含めてとんとんであったとしても、

課税を先延ばしにできた分メリットはあるんじゃないですか!」

ということだそうです。

 

この「不動産投資節税」、本当に節税?

おっしゃることはなんとなくわかりました。

理屈も間違っていなくはないです。

おっしゃる通りです。

 

…しかし、しかしですよ。

…いくらなんでも効果薄すぎませんか?

 

2000万キャッシュアウトさせて、年間たったの150万損金ですよ。

生命保険が「半額しか損金にならなくなった」なんて言われていても。

2000万キャッシュアウトさせれば1000万損金にできるんです。

しかも生命保険は返戻率が多少下がるのを我慢すればいつでも現金化できます。

担保に資金調達だってできます。

 

「不動産」って、売りたいときに売れないですよね。無理に売れば値下がりしますし。

しかも耐用年数をはるかに過ぎた木造物件。

最終的に現金化する部分にかなり不安がある気がします。

 

しかもこの話、2000万のうちの1000万が建物になってるので成り立ちますけど。

築22年を過ぎてる木造建物ってもう評価額つかないんじゃないでしょうか。

ほとんど土地だけの値段で取引されそうな気がします。

土地が1900万で建物100万では。

そもそも償却費がほとんど出ませんから成り立たないですよね。

売買契約書に「建物1000万、土地1000万」って書いてあれば。

第3者間で売買された公正な価格だから大丈夫、とでも言われるんでしょうか。

だったらみんな「建物1999万9999円、土地1円、」って書きますよね。

途中で新築並みにフルリフォームしてる物件を探してくるんでしょうか。

ちょっと興味はありますが。

 

「節税」を目的にするのではなくて。

純粋に地価が上がりそうだとか。

不動産投資をメインの目的にされるのなら、全く価値のない話でもないと思います。

 

しかし「節税」をうたって購入を勧めるのは… 少し無理がある気がしました。

 

コメント

  1. […] 不動産を購入することによって、税金対策をしようという内容です。こちらの岩永龍太郎税理士事務所のブログに詳しい解説が具体例と一緒に解説されていますので、引用させて頂くと同 […]

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