先週、税理士会から「税理士職業賠償責任保険 事故事例」というものが届きました。
実はこれ、毎年送られてきます。
「こういう事故が多いから、気を付けてくださいね。」という。
税理士会の親切であり、保険金支払件数を減らしたい保険会社の気遣いでもあります。
実際に世の中で「取り返しのつかない」税金事故はどれくらい起きているのでしょうか。
税理士職業賠償責任保険の支払われる事故
税理士がクライアント様から「損害賠償請求」を起こされるって、どんなケースと思われますか?
まず思いつくのは、
①税金を多く申告して損害を与えられた
②税金を少なく申告していたのが税務調査でバレて、多額の追徴課税をされた
というところでしょう。
ですが、①に関しては。
たいてい、多少計算を間違っていたくらいなら、5年以内であれば「更正の請求」。
要は、「払いすぎていたので返してください。」と税務署にお願いして返してもらう制度を使えます。
ですから、税理士が「損害賠償」するまでの話にはなりません。
②に関しては。
以前の記事で「税理士のせいだ!」「社長のせいだ!」と争った裁判の記事を書きました。
普通、社長に黙って税理士が勝手に税金を少なく申告する、ということはあまりありませんので。
税理士のせい、とはっきり認定されるレアケースでない限り。
損害賠償はなさそうです。
では、どんなケースで「損害賠償」が起きているのでしょうか。
実は、①の税金を多く払いすぎたケースの中には、後から訂正が効かないものがあります。
2012年度事故原因第1位:消費税簡易課税選択不適用届の出し忘れ
2012年度の税理士賠償責任保険の事故件数は281件、保険金支払額は約8億円でした。
1件当たり300万円弱ですね。
この281件のうち、132件、実に47.0%を消費税関係の事故が占めています。
そして中でも。
簡易課税選択不適用届の出し忘れが50件!
簡易課税の誤選択などと合わせて実に102件が消費税の事前届出関係の事故です。
なぜこれがこんなにも多いのでしょうか。
理由は上でも書いたように、「取り返しのつかない」事故だからです。
消費税の課税事業者の選択、簡易課税の選択・不選択は、その期がはじまる前に。
届出を出して決定しなければなりません。
この「その期が始まる前」が曲者なのです。
誰でも、決算を締めて決算書を書く段階では、集中していろいろなことに目が行きます。
消費税の申告書を書きながら、もし簡易課税だったらどうかも考えたりします。
ところが、この段階ではもう遅いわけですよね。
3月決算なら2月、12月決算なら11月。
この日常業務に追われているタイミングでは、そこまで目が行かないわけです。
でもこのタイミングで、届出を出し忘れたら。
もう取り返しがつかないわけですね。
税理士が関わっていても、事故がこれだけ多いわけです。
個人事業主の皆様、12月決算法人の社長様。
来期の消費税の届出は大丈夫ですか?
是非確認なさってみてください。
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