贈与にまつわる不思議~「贈与した=損した」側になぜ税金がかかる?②

【相続・贈与】の落とし穴

前回の記事では、【個人から法人に】贈与した場合。

「時価で売却して、代金を贈与した」とみなす、

「みなし譲渡」の規定があることについて考えました。

今回は【法人から個人に】【法人から法人に】のケースです。

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【個人(自然人)】と【法人】の違い

「個人事業はまだ適当でもいいけど、法人にしたらきちんとしないと」

と言われるのをよく耳にします。

(個人事業なら適当でも良い、というわけではないのですが…)

 

手続や会計、申告についてももちろんですが。

かなり気を使うようになるのは、「財産を移転させる時の価格」です。

 

税法上、【自然人(個人)】と【法人】は何が違うかと言いますと。

個人には“人情”がありますので。

多少自分が損をしても人のために何かをしてあげることがあります。

タダで仕事を手伝ってあげたり、不動産をプレゼントすることだってあるわけです。

 

しかし税法上、法人は利益を上げるためにこの世に存在している、と考えます。

ですので、自分が損をすることは、基本的にはしません。

時価1000万円の資産を300万円で誰かに売ったり。

時価1000万円の資産を0円で誰かにあげたりするはずはないのです。

 

【法人から個人】【法人から法人】の贈与

となると、1000万円の資産を0円であげてしまった場合どう処理するでしょうか。

法人ですから、損をして時価以下で売ることはありえ無いわけですので。

とにかくまず、「1000万で売却した」という処理をします。

 

でも、代金をもらってないわけですよね。

ですので、この代金を相手に渡した理由付けをします。

相手が社内の人物。

役員や従業員であれば、きっとボーナス代わりに渡したのでしょう。

ボーナスとして、代金の1000万円を支給した処理となります。

相手が社外の第三者であれば。

本来見ず知らずの人に財産はやらないはずですが、理由付けがないので。

寄付として1000万円を渡した処理となります。

 

おわかりのように。

法人の行為については、常に「時価」で行ったとみなすわけです。

 

もし法人から社長に名義変更したら…

では恐ろしい例題です。

数十年前に法人が1000万円で購入した都内の土地があります。

現在は時価1億円まで値上がりしています。

この土地の名義を、サラっと何も考えずに社長の名義に変えました。

税務上、いったい何が起こるでしょうか。

 

まず贈与を受けた社長様。

タダでもらったわけですが。

「法人が社長に1億で売却し、その代金分を支給した」形になりますので。

1億のボーナスをもらったのと同じ扱いになります。

当然、給与所得として所得税の課税対象です。

もともと収入の多い社長様であれば、約半分は所得税・住民税に消えます。

 

続いて法人です。

「1000万円で購入した土地を、社長に1億で売却した」形になりますので。

9000万円の譲渡益が発生します。

「でも、1億社長に渡してるんだから、その分は経費で落ちて相殺じゃないの?」

いえいえ、“役員賞与”ですから1円も損金になりません!

結果、9000万円の譲渡益に対して丸々40%近い法人税を負担することになります。

 

1億円の土地の名義を替えただけで。

8割以上が税金に消えてしまいました。

 

 

このように、法人の資産を移転させる場合には。

それが今いくらなのか「時価」を把握しておかないと、ひどい事故を招く可能性があります。

では、上の例題で。

「時価1億円の土地をタダであげてしまうと大変なことになるから、

一応1000万円の値段をつけて社長に売ろう」

とした場合にはどうなるでしょうか。

 

次回の記事で考えてみたいと思います。

 

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