前回の記事で、税務調査でインパクトの大きい【架空人件費】について。
疑われないために、源泉徴収簿の作成と給与支払報告書の提出がポイントということを取り上げました。
来年からのマイナンバー制度導入で、これはさらに注意すべきところになるかもしれません。
来年からの源泉徴収簿は、住所+氏名+生年月日+(New!)マイナンバー
前回の記事で、源泉徴収簿の作成と給与支払報告書の作成のために。
どんなに短期間・少ない月給のスタッフであっても。
住所+氏名+生年月日をおさえる必要があることを取り上げました。
来年からは、これに【マイナンバー】が加わります。
源泉徴収票、給与支払報告書を作成する際。
今年までのあの小さな用紙はサイズが2倍になり、マイナンバーを記入する枠が増えます。
これによって、提出を受ける役所側の手続きは何か変わるのでしょうか。
従来は手作業の突合せ・集計。これからは全自動で所得合算!
従来は。税務署も市町村も。
受け取った源泉徴収票や給与支払報告書を手作業で集計していたようです。
2ヶ所で給与をもらっていて、本当は確定申告しなければいけないのに。
してなかったけどばれなかった、とか。
本当は2ヶ所足すと103万円を超えるのだけど。
黙って夫の扶養に入っていたけどばれなかった、などという話はちらほら聞きます。
ばれている人たちもたくさんいるのですが。
何しろ手作業の名寄せですので、摘発率100%には程遠かったものと思われます。
しかも住所が違ったりや名前の漢字が違ったりすれば。
そもそも名寄せができなかったケースもあったはずです。
マイナンバー施行で、ここは大きく変わります。
今後はマイナンバーを使ってコンピュータ上で全自動で名寄せが行われ。
数か所から給与があり、本来申告義務がある人はリスト化されるはずです。
確定申告の時期が終われば提出者リストとの突合せがコンピュータ上で行われ。
提出していない無申告者は全自動であぶりだされるはずです。
収入が一定額を超えているのに、誰かの扶養に入っている人。
本当は収入があるのに生活保護を受給している人なども同様です。
ばれたら困る…マイナンバーを提出しなかったらどうなる?
そこでおそらく現場で出るのではないかと思われる疑問です。
収入があることがばれると困る従業員。
仮にその従業員のために。(本当に当人のためになるか、という倫理的問題は無視します)
マイナンバー不明で、空欄の源泉徴収票を作成したらどうなるのでしょうか。
あるいは、「私はマイナンバー法の施行には絶対に反対だ!」と言って。
全従業員のマイナンバーも、事業所のマイナンバーも一切記入せず。
全ての税務申告書類を提出したらどうなるのでしょうか。
実は、いわゆるマイナンバー法(番号法)では。
マイナンバーの管理体制の不備、情報漏洩させた場合の罰則は厳しくても。
そもそもマイナンバーを全く預からなかった場合。
つまりマイナンバー制度を無視した場合の罰則は、今のところ無いようです。
個人情報流出等のリスクから、様々な反対意見もある中で。
多少見切り発車的にスタートする制度だから、というところなのでしょうか。
当初は罰則が無いようですが、今後はわかりません。
おそらく数年後には罰則も制定されると思います。
しかし税理士が何より気になるのは。
【直接罰則が無くても、税務調査のリスクを倍増させるのではないか】という点です。
あるべきマイナンバーが無い書類=見るからに怪しい書類!
ちまたでは「マイナンバー制度反対!」とか。
「マイナンバーカードの受け取りを拒否しよう!」とか。
「わざとSNSにマイナンバーをさらして、再発行せざるを得なくさせてしまおう!」
などと叫んでいる人たちもいるようですが。
おそらく大企業は当然、きちんと制度を導入するでしょうし。
大半の中小企業もそうすることと思います。
そんな中、「反対!」と叫ぶ少数の企業と。
収入がばれては困る少数の人たちと。
その周辺だけが、マイナンバー空欄で税務申告書類を提出したとしたら…
税務署には、きちんとマイナンバーが記載され、様式の整った90%以上の大多数の書類と。
10%未満の、【なぜか】マイナンバーがない書類が届くことになります。
皆さんが税務調査官だとしたらどうしますか。
税務調査官に追徴課税のノルマは無い、と言われてはいますが。
やはり何回も手ぶらで帰れば気まずいでしょう。
当然、普段から書類で調査先を選定する段階で。
怪しいところ、追徴できそうなところ、経理のずさんそうなところを探しているわけです。
その調査官である皆さんの目の前に。
マイナンバーの入った90%の書類と。
【なぜか】マイナンバーが無い10%の書類が山になっています。
何をどう考えても。
この【マイナンバーが無い書類】、怪しいですよね。
しかも、給与に関係したポイントです。
表に出せないから、隠したいから、付番されていない人件費です。
【架空人件費】の臭いがプンプンしませんか。
仮に架空ではなかったとしても。支払を証明できない給与の可能性も高いです。
証明できない給与、ということは。
実際に払っていようがいまいが知ったことはありません。
指摘すれば【架空人件費】認定できる、ということでしょう。
結論:脱税者さん・脱税者共犯さん以外は、マイナンバーにきちんと取り組みましょう
そこで、前回の記事の話と同様の話です。
確信犯的な脱税者さんが、片っ端から税務調査に入られたり。
追徴を受けるのは当然としても。
いたたまれないのは、真面目ですが、少しずさんな方、制度を知らなかった方。
そのような方が巻き込まれることです。
仮に、悪気も何もなくてもマイナンバー対応が単に遅れた方の申告書が。
先程の90%の整った書類、10%のマイナンバーの無い書類の山に紛れ込んだらどうですか。
申告書類を見ただけでは。
調査官は、本当に怪しい先の書類と、全く見分けがつきません!
調査先に選定される可能性は間違いなく上がるのではないでしょうか。
また、当然調査官もそこをつつくつもりで調査に来ます。
通常以上に、書類がきちんと整っていないと、ひどいことになりそうです。
しかし対応が遅れているような事業所では…そもそもの書類もきっと…
このように、現段階では無視しても罰則のないマイナンバー制度ですが。
税務署から、「脱税者グループ」「架空人件費だらけグループ」に見られてしまわない為に。
皆様、是非、マイナンバー制度対応の準備はお早めに。
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