SNSで勧誘された「起業セミナー」に。
「数十万円つぎ込んだものの全く役に立たなかった!消費者金融で借金までしたのに!」
と、若い大学生が被害に遭っているそうですね。
「若い人たちの向上心につけ込むなんて許せない!」という声が多いようです。
私も確かにこの業者は悪質だと思いますが。問題は他のところにある気がします。
【起業セミナー】の費用対効果
セミナーや教材などというものはもともと当たり外れがあるもの。
私も勉強する手段は費用対効果をかなり考えて選びますが。
ハズレだったなと思うことがやはり一定割合あるものです。
資金を投入したところで、外れることもあるのですから。
本来は無理なく出せる予算の中で、極力効果の高そうなものを選ぶのが当然です。
自分で選んだのではなく。
勧められたものを引きずられて購入する時点ですでに負けています。
何より「そのために消費者金融で借金」というところが信じられません。
中学校レベルの掛け算割り算ができれば、それがいかに愚かかくらいわかりそうなものです。
世の中の【金利】の仕組み
「借金できるのが信用」とか。
「ローン組めたんだよ、すごいだろ」とか。
若い人たちのこのような会話を聞くたびに、税理士は非常に情けない気持ちになります。
【金利】とは何でしょうか。
金融機関はお金をたくさん持っているとはいえ。
それを眺めてニヤニヤしていたところで一円も利益は上がりません。
運用しなければならないわけです。それで、常に貸出先を探しています。
・集めてきた資金について金融機関側が支払う利息
・貸出先を探し、査定するスタッフの人件費
・店舗の維持費
などが金融機関から見た経費です。
これを上回る収益を回収できるように、貸出金利を設定しなければなりません。
仮に、これで採算の合う金利が1%としましょう。
しかし、ここで問題があります。
貸したお金が全部金利と一緒にきれいに返ってくるのであれば。
金融機関は1%で貸し出しできます。
しかし、貸したお金が100%返ってくることはありません。
必ず一定割合で返せなくなる人が出ます。
話を分かりやすくするため単純化したケースで考えます。
100万円をぞれぞれ10人に貸して。10人に1人(10%)が返せなくなるとします。
銀行は100万円損失が発生します。
これをカバーするためにはどうすればよいでしょうか。
総額1000万円を貸し出すわけですから、10%、全体の金利を上げれば良いですよね。
上げた金利の100万円で貸し倒れの損失をカバーできます。
同じように、もし10人に2人、20%が返せなくなるなら。
金利を20%上げれば金融機関は損失をカバーできます。
【金利】はその人の信用ランク
実は、金融機関はお金を貸す相手をかなり細かくランク付けしています。
超優良企業や富裕層は、まず返せなくなることなどない優良顧客です。
このランクの人々に貸すなら、金利は1%でも大丈夫です。全部返ってきますから。
しかし、起業したばかりの企業や。
順調に経営しているとはいえ規模の小さい起業は。
やはりいつ潰れるか分かりません。
そこで、金融機関はその企業と近いランクのグループに分類している企業の。
倒産確率を足したところで金利を設定します。
中小企業の場合。
プロパーで年利2%から3%で貸してもらえるなら、かなり評価されている方でしょう。
自動車ローン。
ディーラー提携のローン会社の金利で3%から4%くらいでしょうか。
もう少し高い一定割合で貸し倒れると思いますが、万が一の場合には車を回収できますので。
その分は優遇した金利と思われます。
では、消費者金融の金利。
銀行のカードローンの金利。リボ払いの金利。
あの、15%とか20%という金利はいったい何でしょうか。
あれは、
「あんたたぶん1/5くらいの確率で破産するね」
と金融機関から評価された結果の金利です。
5人に1人が破産する人びとのグループ、というとどんな人たちをイメージしますか。
かなりだらしなかったり貧しかったり自己管理ができなかったりする人たちでも。
5人に1人が破産するでしょうか。
「借りれるのが信用」などと言う次元の話ではありません。
こんなところに借りにくる時点で。リボ払いとは何かすら理解できない時点で。
それくらいの底辺ランクのグループの人と評価されているだけです。
借金できるのは信用?
このように「自分がお金を金利何%で借りているのか」いうことで。
ある程度自分の信用が測れるのは事実です。
しかし本当に信用のある人は。こちらから「貸してくれ」という必要すらありません。
金融機関は貸出先を探しているのです。金融機関の方から、
「何か資金需要はありませんか?」「金利は安くしますのでご利用なさいませんか?」
と聞かれます。
私も幸い、「自動車購入される時だけでも利用なさいませんか?」と聞いて頂けますが。
現金一括以外で買う気はありませんのであいにく利用機会がありません。
ところが、事業がうまくいかなくなると。
だんだん「借りてください」と言われなくなります。
借りに言っても渋られ、提示される金利が上がって行きます。
金融機関で事業融資を断られ、金利10%台でどこかから借りなければならなくなった時。
それは事業が終わったとき。残念ながら事業を畳むべきときです。
「借金できるのが信用」なのではなく。
低金利で。それも金融機関から「お願いされて借りてあげる」のが信用です。
起業セミナーに参加するために消費者金融で借金する!?
では、結論として。
起業セミナーに参加するために消費者金融で借金するという感覚はどうでしょうか。
消費者金融で借金をするのは事業が終わったときです。
スタートの時点ですでに終わっています。
これが理解できないようでは、どのみち起業したところで先は見えています。
なぜ数10万円のセミナーに行く前に、図書館で金融の基礎知識を仕入れないのでしょうか。
本屋で事業計画書の書き方を調べないのでしょうか。
ネットで起業支援を行なっているコンサルタントのブログや事例を読まないのでしょうか。
なぜ中学生でできる掛け算割り算ができないのでしょうか。
考える力を失っている若者。
聞きかじっただけの「借金は信用」などという単語のように。
自分に都合の良い情報以外は耳から締め出してしまう若者。
自分で情報を集める努力ができない若者が増えているように思います。
こういった人になってしまわないように、せめて自分の周りの子供達だけでも。
教えて行きたいものです。
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