そもそも「軽減税率」が議論され始めた経緯をさかのぼると。
「消費税率を引き上げて、今まで買えていた生活必需品が買えなくなったらかわいそう」
「生活必需品、食料品だけはそのまま買えるようにしてあげようよ」
という出発点です。であれば。
ちょっと贅沢してお出かけする「外食」を8%軽減にする必要はないわけですよね。
レストランとイートインの境目は?
「外食」は贅沢だから10%。単に「食品」を買うだけなら8%。
となった場合。グレーになるのはいわゆる「イートイン」コーナーです。
私もコンビニをよく利用します。
100円で轢きたてのアイスコーヒーが飲めるなんて、昔は考えられませんでした。
この夏の暑い時期、次のクライアント様のところに行くまでの少し空いた時間。
冷房の効いたイートインコーナーで、冷たいコーヒーを飲みながら。
ノートPCを開いて雑用をすませることができるのは助かります。
では、この100円コーヒー。贅沢な「外食」になるのでしょうか?
同じコーヒーを持ってコンビニを出て、車内で飲んだら?
国税庁Q&Aはこうなっています。
軽減税率が適用されない「飲食店業等を営む者が行う食事の提供」とは、
① 飲食店業等を営む者がテーブル、椅子、カウンターその他の飲食に用いられる設備のある場所において、
② 飲食料品を飲食させる役務の提供
をいい、例えば、レストランやフードコートでの食事の提供があります。
テーブル、椅子などが用意されていて、そこで食べられるようになっていれば、
「外食」ということですね。
コンビニのイートインコーナーも立派な「外食」になりますので10%です。
でも同じコーヒーを持ち帰りするのは?
こちらについてはQ&Aでこうあります。
いわゆる「テイクアウト」や「持ち帰り販売」は、テーブル、椅子等の飲食設備のある場所において、飲食料品を飲食させる役務の提供には当たらない単なる飲食料品の販売であることから、軽減税率が適用されます。
なお、店内飲食と持ち帰り販売の両方を行っている飲食店等においては、その飲食料品を
提供する時点で、「店内飲食」(標準税率)か「持ち帰り販売」(軽減税率)かを、例えば、
顧客に意思確認を行っていただくなどの方法により判定することになります。
同じコーヒーでも持ち帰りなら8%、という部分はなんとかわかるのですが。
「顧客に意思確認を行う」?! 若干無茶な単語が入っています。
店員さんから聞かれたときに「ここで食べていきます」とわざわざ言って。
10%の消費税を払おうとする人、どれくらいいるのでしょうか。
「持って帰ります」と言って8%でお会計して、横で食べる人ばかりではないでしょうか…
その点について店に責任を問われることはないとは思いますが。
最初から全て8%と決めてくれた方が、いらぬ気を使わなくて済むように思います。
フードコートや公園は?
では、食べれる場所を用意して提供していれば10%、ということは。
食べれる場所はあるけれど、その業者が用意したわけではない場合どうなるのか?
というラインがまたグレーゾーンで出てきます。
こんなことを決めるのに労力を費やす意味があるのか…という気分になってきますが。
でも決めておかなければ大変なことになりますから、決めざるを得ないのですよね。
典型的なものがイオンなどのフードコートです。
フードコートに出店しているラーメン屋さんではなく。
イオンが椅子やテーブルを用意しているわけです。
ではこのラーメン屋さんの売り上げは単なる食品の提供なので8%なのか?
Q&Aではこうなっています。
飲食設備とは、飲食料品を提供する事業者が設置したのものでなくても、設備設置者と飲食料品を提供している事業者との間の合意等に基づき、その設備を顧客に利用させることとしている場合には、これに該当します。
ラーメン屋さんが用意したわけでなくても。
そのお客さんに利用してもらってよいという合意の下でイオンが用意しているのだから。
食べる場所を用意して提供している「外食」で10%、という判断のようです。
では公園のベンチは?
移動販売車で食品を売る場合、何もない路上で売るよりも。
少し座れるところやベンチのある公園のそばで売った方が売れますよね。
同じ移動販売車が、通常の路上で売るなら単なる食品販売8%なのに。
公園のそばで売ったら10%?
Q&Aはこうなっています。
ご質問の公園のベンチが、合意等に基づき貴社の顧客に利用させることとしているものではなく、だれでもベンチを利用できる場合には、飲食設備に該当せず、貴社の飲食料品の提供は…軽減税率の適用対象となります。
勝手に公園のそばで販売する分には8%軽減で良い、ということですね。
公園と合意を取っているわけではないから、ということのようです。
~連載記事【消費税軽減税率の落とし穴】~
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