【成年後見制度】親族ではなく他人を後見人にする悲しい理由

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前回の記事で、親族ではなく他人が成年後見人になるケースが増えていること。

その人手不足解消の為、税理士も参加を要請されていること。について書きました。

研修の中で少しショックな、その理由を聞きましたので記事にします。

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申し立ては親族、なのに成年後見人になるのは親族以外

親族が成年後見人になったケースの割合です。

◆平成23年度-55.6%。

◆平成24年度-48.5%。(ここで逆転!)

◆平成25年度-42.2%。

現在では親族よりも他人が後見人になるケースの方が多いようです。

それも割合はほぼ4:6!

親族が後見人になるケースが少数派になってきています。

関係

しかし申し立てをした件数を見ますと。

親族以外の人(大半は市区村長)が申し立てをしたケースは15%前後です。

申立

ですから、後見の申し立ては親族がしていますが

実際に後見人になるのは他人というケースが多いわけですね。

親族後見人が減っている悲しい理由

「親族が認知症になったおばあちゃんのお世話をする」。

こんな自然なケースが減って。

他人が後見人になる一見不自然なケースが増えているのはなぜでしょうか。

実は、裁判所が親族を後見人にしたがらないケースが増えているそうです。

この下の数字、何の数字だと思われますか。

◆平成23年-311件-33億4000万円

◆平成24年-624件-48億1000万円

◆平成25年-662件-44億9000万円

非常に悲しいことですが。

裁判所が発見した、後見人に財産をかすめ取られていた被害の件数と金額です!

平成25年度、1件平均678万円!

年々被害の平均額は減っているものの、件数は増える一方です。

そして、残念なことに第三者の専門職による事件もあります。

しかし、その割合は全体のわずか2.4%。

実に、97.6%の事件で、判断力の低下した方の財産を数百万円単位で。

親族が横領していたわけです。

これも発覚した件数だけですので。

実際はさらに多いのかもしれません。

後見人の不正が絶えない理由

「親族より他人の方が信用できる」なんて悲しすぎると思うのですが。

しかしこの「成年後見制度」の倫理的に高いハードルを考えると。

無理もないのかもしれません。

財産を持っているものの、財産がなくなっても全く気付かない」方の。

財産の管理について全権をゆだねられた時

「自分は絶対に手を出さない!」

という強い意志を持ち続けられる人がどれくらいいるでしょうか。

順調な時には理性が働いても。

失業したり、生活が苦しくなったり。

身近な誰かが羽振りが良いのを見てうらやましくなったり。

魔が差した時には。やはり手が伸びてしまうのでしょうか。

その点、客観的に見ますと。

専門職後見人には「失うものがある」という、最後のブレーキがあります。

弁護士さんや司法書士さんも私を含め税理士も。

業務停止等の懲戒処分を受けた場合の損失は数百万円どころではありません。

横領したところで、割に合わないのです。

親族後見人をされる方が皆そうではありませんが。

主婦であったり、ご自身も年金生活をしておられたり。

社会的、経済的に失うものが少ない状態であるケースと比較しますと。

悲しいことですがやはり第三者専門職が後見人になった方が。

ご本人を守れるケースが多いのかもしれません。

後見人制度の趣旨の理解が広まって欲しいですね

先に書いたように、親族が申し立てをし、他人が後見人になる。

このケースで、後見人が親族から恨まれたり嫌われたりすることもあるそうです。

後見の申し立て理由を見ますと。

多い理由は「預貯金の解約」「介護施設に関係した契約」。

この制度の本来の趣旨である「身上監護」は全体の2割くらいの件数しかありません。

動機

本人のお世話のため、というよりは手続の必要に迫られて。

親族が後見を申し立てるわけです。

この時点で、親族は。

■申し立てた自分が後見人になる。

■本人の財産はもう自分が好きにしていい。

と思っておられることがあるそうです。

他人が後見人になる可能性があることも。

今後ずっと裁判所のチェックが入ることも、気付いておられません。

裁判所は後見人を選任する際、面談をするわけですが。

このような雰囲気や言動がありありと表れていたり。

すでにご本人の財産に手を付けている節が見受けられたりしますと。

後見人にするのは危険と判断して第三者を選任するわけです。

本人の財産はもう自分のものと思っていた親族は心外です。

後見人に通帳を渡すのを拒否したり。

あからさまに敵意をむき出しにされることもあるそうです。

相続人のために「財産」を保護する制度ではなく。

「本人」を保護するための制度であること。

実際に多くの事件が起きている中で。

裁判所への報告などの事務手続きを、以前よりも几帳面に行うことが求められていること。

倫理的な問題、事務処理の問題。

専門職第三者後見人を選任することが、本人や親族にとっても良いケースが増えていること。

せっかくの、良い理念と仕組みに基づいた制度だと私は思うのですが。

理解が広がると良いな、と心から思った研修でした。

(この記事の統計や図は、裁判所の「成年後見関係事件の概況」から引用しています。)

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