中小企業の社長様と話していて最近特によく感じる点です。
「新人がすぐにやめてしまう」「いい人がいない」「続かない」
皆様、スタッフの募集・採用・教育に、本当に、本当に苦労しておられます。
お話ししていて感じた【根本的な】原因についてまとめました。
そもそも中小企業が「人を雇う」こと自体がもう時代遅れなのかもしれません。
中小企業がスタッフ採用で苦労する理由①職場に魅力が薄い
税理士という仕事柄、お話しするのは基本的に中小企業の経営者様です。
従業員20名未満でも、中にはまるで大企業のように。
経費精算の一つ一つに社長も含めて全員が稟議書を回し。
予算管理、実績対比をして無駄を押さえ、ノルマ未達の社員に発破をかけ。
毎期黒字決算で多額の法人税を納税し。
結果、大企業に準ずるレベルの「給与水準」で経営なさっているところも。
確かに少数ながらあります。
しかし中小企業の大半は。
経理はどんぶり勘定、平常年は赤字たまに黒字、賞与は社長の気分…
という状態ではないかと感じています。
これでは当然従業員の給与水準も上げられるわけがありません。
どんなに綺麗ごとを言ったところで。
結局生活して家族を養っていくのに十分な給料が支給できなければ。
正社員スタッフが辞めるのは時間の問題です。
「人間関係」という点でも若干のハンデがあります。
大企業は大企業で、違った種類の人間関係の悩みもあるとは思いますが。
少人数の中小企業で、何人も気の合わない人がいると毎日が地獄です。
人数が少ない分、強烈な人が一人二人いるだけでも。
他のスタッフの定着が難しくなります。
また、大企業と違ってイメージ戦略の必要性が薄いので。
周りに何もないへんぴな場所に職場があることも良くあります。
これでその上、他は高齢のスタッフばかりであれば。
「若い人を一名採用する」というのは相当高いハードルになります。
中小企業がスタッフ採用で苦労する理由②日本人の気質の変化
上の理由は当てはまるところが多そうとはいえ。
考えてみれば中小企業は昔からそうでした。
ではなぜ、「最近」特に苦労する経営者様が増えたのでしょうか。
昔からのアメリカンジョークに出てくる日本人のキャラクターは。
「勤勉」「真面目」「働き過ぎ」「気を使いすぎて文句が言えない」。
古き良き時代の日本人、とはこんな人たちだったのかなと思います。
私の父親もそうでしたし、父親と同年代の方と話していて私がいつも思うのは。
「なんて働き者なんだ…」「“会社の為”ってどういうこと?」「意味がわからない」。
自分の責任で会社の信用を失う可能性があるなら。
何日でも会社に泊まり込みで徹夜するような。
私たち世代の感覚ですと、「それってブラックでは…」と思うような仕事を。
さも当たり前にこなして、高度経済成長期を引っ張ってこられたように思います。
本当に尊敬します。
もっともそれくらい働いてくれる“勤勉さ”と“責任感”と“忠実さ”があったからこそ。
会社は終身雇用などという極めてリスクの高い雇用形態でも。
その人たちを雇うことができたのでしょう。
私がジェネレーションギャップを感じるくらいです。
私の下の世代の人はきっとさらに理解できないことでしょう。
「自分のしたいことと違うから」「定時で帰れないから」
「友達の会社の方がボーナスが多いから」「何だかきついから」と、
ささっと会社を辞めて、自分探しの旅に出てしまう人たち。
悪いとか良いとかではありません。
時代の変化なのでしょう。
中小企業の【雇用】のリスク
しかし、「時代が変わった」「難しい時代になった」と。
時代のせいにしても何も変わりません。
できるのは、その時代に対応できるように経営者が変わることです。
人々の人間性が変わっているのに。
同じ雇用形態を取ろうとすることにそもそも無理があるのではないでしょうか。
「雇用」というのは大抵の場合。
一定期間スタッフが辞めないことを前提に成り立つ契約です。
きちんと仕事を任せられるスタッフを広告費をかけて「募集」して。
ただでさえ応募者が少ない中から、それでも社長が面接の時間を割いて「採用」して。
その人が給料に見合う収益を生まない期間「教育」して。
この後、その人が給与とそれまでにかかったコストを超える収益を生んでくれて、
初めて採算が合うのです。
途中の段階で辞められればどうなるでしょうか。
それまでにかかったコストの全てを文字通りどぶに捨てることになります。
50万円、100万円をどぶに捨てる。
そうそう捨てようとする人はいないでしょう。
しかし、人の採用に関していえば。
完全にその状態を繰り返している中小企業が数多くあります。
「新人が続かない」時代になっているのに。
特に中小企業では「続かない」ことを前提に考えなければならない時代になっているのに。
本当に、どうしてもそんなリスクを負わなければならないのでしょうか。
「そもそもそんなリスクを負わずに経営する方法」を検討してみる価値は大いにあります。
その内容は次回の記事で。
【雇わない・雇われない】時代の経営~【雇用】から【外注】、【集団】から【群れ】へ
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