夏から秋にかけて。
業務量が少なく、税理士の気持ちに少し余裕のある時期です。
この時期に研修や勉強にも時間を割くのですが、先日は少し普段と毛色の違う研修。
税理士会主催の成年後見人養成研修に行ってきました。
成年後見制度の利用率
成年後見制度。
あまり聞きなれない言葉かもしれません。
現在日本での利用者数は約16万人で人口の0.1%。
ドイツなどの諸外国と比べるとわずかな利用率です。
実は私も。研修を受けるまであまりよく知りませんでした。
成年後見制度が必要な理由
成年後見制度とは。
一言で言いますと、
「判断力が低下して自分で生活することが難しくなった方を、国が守ろう 」
という制度です。
足腰が弱ってお風呂に入れなくなったら。
目や手先が不自由になってご飯が作れなくなったら。
ヘルパーさんが代わりにしてあげることで。本人は生活を続けることができます。
同じように。
判断力が低下して悪徳商法にどんどん引っ掛かってしまうようになったら。
介護の費用を賄うために不動産や株を売る必要があるのに判断や決定ができなかったら。
誰かがかわりに契約をしてあげないと、生活を続けることができなくなるわけですよね。
その決定をご本人の代わりにしてあげる人を【後見人】と呼びます。
後見人がつくと登記がなされ、後見人は「取消権」「代理権」を法的に付与されます。
本人が騙されたり良く判断できずにしてしまった契約を取り消す「取消権」。
介護施設の入居、不動産の売却等の契約を当人の代わりに行う「代理権」。
本人ができない部分、弱い部分を補うことができるようになります。
成年後見制度の目的
20世紀の日本には似たような制度として「禁治産」という制度がありました。
財「産」を「治」めることを「禁」止された人、という意味で「禁治産」です。
認知症や精神障害で財産を管理できなくなった人の財産を守るための制度でした。
どちらかというと「本人」を保護するためではなく、「財産」を取られないための。
親族を保護するような制度でした。
現在の成年後見制度の趣旨は「財産」ではなく「本人」を守ること。
認知症であっても。精神障害があっても。
少しでも普通に近い生活が送れるように。
(「ノーマライゼーション」と表現するそうです。)
有効に介護制度や今ある財産を活用する判断を、本人に代わって下すことが目的です。
そのためには、付随的に財産管理も大切になるわけですね。
成年後見制度の仕組み
でもここで難しい問題があります。
判断力が低下して、騙されても気がつかない方。
【後見人】その人に騙されたり財産を掠め取られても…
やっぱり気がつかないですよね。
後見人がそんなことをしてしまうようでは全く意味がありません。
そこで。
後見人を裁判所が監督して、決まった期間ごとに財産の明細や収支の報告書を出させることで。
後見人が悪さをせず、きちんとご本人をお世話しているかチェックする仕組みができました。
非常によく考えられた制度ですね。
昔、大家族で子供たちがみんな近くに住んでいた時代は家族がしていた。
介護。老後のお世話。
時代とともに、親族から社会全体で分担するようになってきました。
体のお世話だけでなく、判断、契約、財産の管理。
この分野でも人手が必要になっているようです。
そもそもなぜ「税理士」の私がこの研修を受けに行くことになったのかと言いますと。
人手が足りなくて、税理士にも協力してほしいという要望があるようで。
後見ができる税理士を増やそう、ということで税理士会が研修を行っているそうです。
私のイメージでは。後見人の大半は親族で。
何か事情のあるときだけ弁護士さんや司法書士さんがされているのかな。
と思っていたのですが。
実は現在では、親族以外が後見人になるケースの方が多いそうです。
びっくりしました。理由を次回の記事で。
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